現在の日本競馬界を語る上で欠かすことの出来ない話題がディープインパクト産駒の存在。自身も無敗の三冠馬からGⅠ7勝馬へと上り詰め、競馬史に名を残すこととなったディープインパクトだが、種牡馬デビューから間もなくサイアーとしての存在感もアピールし、産駒デビュー2年目にしてリーディングサイアーを獲得、以後不動の地位を築いている。
その産駒の勝率など数字で見ると圧倒的ではあるが、実情では牝馬による活躍が先行し、牡馬の活躍は若干劣る。具体例で言えばジェンティルドンナという自身の活躍にも迫るほどの異次元級の牝馬を早々に輩出してしまったのに比べると、牡馬は若干心もとないものがある。
とは言え、それはそれ。牝馬が突き抜けて凄すぎるだけであって、牡馬の活躍馬も充分に出しているのは、既にダービー馬を三頭も出しているところからも明らかだ。そんな活躍を見せているディープインパクトだからこそ、菊花賞馬を出せていないというのは唯一とも言える弱点としてどうしても取り沙汰される機会が多くなる。
ディープインパクト産駒は菊花賞が苦手か?
結論から書くならば決して苦手ではないと言える。短・中距離傾向にあると言われる産駒だが、日本で走る以上長距離路線に進むステイヤーというのはそもそも分母自体が少ない。言い方は悪いが、日陰の道と言っても過言ではないだろう。
そんな王道から外れた道を高額なディープインパクト産駒に歩ませるというのは大間違いだ。ディープインパクト産駒が長距離が苦手というのは、環境が作らせた虚像に過ぎない。
ディープインパクト産駒がクラシックに初挑戦したのが2011年のこと。つまり三冠馬オルフェーヴルと同期なのだ。オルフェーヴルから菊花賞をもぎ取れなかったからディープインパクト産駒に菊花賞適性がないというのは、正直荷が重い話だろう。そして、その年にもトーセンラーが3着に入っている。トーセンラーと言えば後のマイルチャンピオンシップ勝馬で、いわゆるマイラーだが、菊花賞で勝ち負けの勝負が出来るほどの着順につけることが出来るのは、逆に言えばディープインパクトの血統の力ということも出きるのではないだろうか。
その後にも2012年ベールドインパクト4着、2013年サトノノブレス2着、2014年サトノアラジン6着と、上位に産駒を送り続けてはいる。惜しい所までは来ているのだ。そして昨年の2015年はリアルスティールの2着、ここもまた惜しかったが勝ち馬のキタサンブラックがディープインパクト全兄のブラックタイド産駒だという点にも着目したい。
血統で語るならば全兄産駒による菊花賞制覇は自身の産駒2着よりも菊花賞制覇に近づいた証と言えるのではないだろうか?
同様に壁となっていた皐月賞を今年制覇したディーマジェスティ
菊花賞同様に、皐月賞もディープインパクト産駒にとっては壁として評されていたレースの一つ。とは言え、それも今年までで、来年以降はその風聞もさることだろう。
理由は明白で、今年の勝馬ディーマジェスティがディープインパクト産駒だからだ。皐月賞の壁を打ち破った馬が今年出走する以上、ディーマジェスティが再度ジンクスを覆さない理由はどこにもない。つまり、ディープ産駒=菊花賞が苦手という論理も同時にほぼ破綻をきたしているのだ。
奇しくも今年2強対決と言われているディーマジェスティとサトノダイヤモンドの2頭ともディープ産駒だ。この2頭は直接対決でも一長一短、甲乙つけがたく、お互いに菊花賞トライアルを1着で勝ち抜いてきている。
サトノダイヤモンドVSディーマジェスティ、勝つのはどちらか
皐月賞馬ディーマジェスティがセントライト記念(2200m)に対し、サトノダイヤモンドが神戸新聞杯(2400m)からのローテーションで、2400mで行われたダービーではマカヒキ-サトノダイヤモンド-ディーマジェスティの順で入線した。ここだけ見るならば長距離適性はサトノダイヤモンドに軍配があがると見ているが、皐月賞馬がダービーを飛ばして菊花賞を獲る例が少なからずあるという点。
近年で言えばゴールドシップがそれにあたり、昨年のキタサンブラックも勝ちこそしていないが皐月賞3着からダービー14着、このおかげでおそらく多くの人がキタサンブラックの長距離適性を疑ったことだろう。長らくキタサンブラックが正しく評価されることはなくなり、先ごろの京都大賞典で初めての1番人気となったことにも繋がると思う。蓋を開けてみれば、JRAの2大長距離GⅠである菊花賞と天皇賞(春)を制するほど長距離に適性がある馬だったのだから脱帽だ。
さて、話を今年の菊花賞に戻すと、距離適性などは実力差に比べればさほど大きな影響を与えない。そして、その与える影響はレース展開などに比べれば微々たるものだ。そうでなければ三冠馬などは生まれようがないのだ。
果たしてサトノダイヤモンドとディーマジェスティはどちらのほうが強いのか?最も強い馬が勝つと言われる菊花賞で、その答えは明らかになる。